加賀友禅とは?
金沢生まれの染色技、加賀友禅
加賀友禅とは石川県金沢市生まれの染色技法のひとつです。加賀友禅の始まりは、500年も前の加賀の国独自の染め技法である無地の「梅染(うめぞめ)」まで遡ります。その後江戸時代中期に模様が施されるようになり、加賀友禅が確立しました。加賀友禅は京都の京友禅、東京の江戸友禅と合わせて「日本三大友禅」とも言われます。
友禅制作工程
1 図案
紙に書いたものから次へと⼯程を進めていきます。
2 ⻘花下絵
⼤きな作品では、布がズレない様に下絵を描くことなどのきめ細やかな注意をしながら作業します。
3 糊置き
加賀藩前⽥家の⼿厚い⽂化や⼯芸芸術への⽀援などを受けながら、⽯川県での加賀友禅は伝えられてきています。
餅⽶と⽶糠を主原料にして、現代⾵に⾔いますとペーストを使って、しっかりと⽬で太さや切れ⽬が無いかなどを確認するための着⾊をしたものを糊とします。原料の⽩に近い状態に蘇芳という植物染⾊材料に⽯灰を反応させて⾚く⾊をつけたり、亜鉛末を加えて墨⾊にして作業への準備をします。
この糊と⾔う材料を筒に⼊れて、⾦属製の先⾦から熟練を要する技術で下絵に添いながら布の上に置いていきます。糊置きした部分の線や点のところが染まらないことと、その性質によって⾊と⾊を分ける防波堤としての役割をします。全ての作品において、この⽷⽬糊置きの出来栄えこそが友禅の仕上がりにはとてもとても⼤切になり、「下絵三年糊置きハ年」とまで称されるように、要の⼯程となります。
お客様と作品の仕上がりサイズを相談しました。額に⼊れて飾っていただくのに最適な⼨法で、先ずは絹の広幅絹の⽩⽣地に⻘花で図案を写します。
4 地⼊れ
⽷⽬糊置きが乾燥してから、布にしっかりと餅⽶などの粘り成分を定着させる為に、海藻の⼀種の布海苔と⾖汁の溶解液を裏側から⿅の⽑の刷⽑を使って布を湿らせ、素早く乾燥させる作業をします。この⼯程により、布の裏側には
⽷⽬糊置きをすることが無くても、友禅染めの定義である糊による防染が出来ます。
5 彩⾊
植物や鉱物や昆⾍などの⾃然由来の原料を乾燥し抽出して染料を製造しますが、近年化学技術の向上により、様々に染料が⽣産されています。多くの⾊相を簡単に購⼊する事は出来るようになってきました。
加賀友禅の創始者の時代は天然の染料が基本で、加賀友禅染では五彩を使いつくられ始めたとされております。
「臙脂⾊、藍⾊、⻩⼟⾊、草⾊、古代紫⾊」の加賀友禅五彩は今⽇では良く知られていることと思います。幾つかの基本⾊を準備し、助剤を加えて無限に明度彩度を調節して⾊を作り出して布に⾊をつけます。暈しの技法を駆使して、地域の特性を⽣かした友禅の制作がおこなわれます。加賀友禅は「外暈し」と称される技法に植物が朽ちていく様の有りのままを描いた「⾍喰い」が有名です。作家にとっても初めて体験する⽅にとっても、こね⼯程での思い⼊れが作品の中⼼となるでしょう。有りのままの⾊を追い求めることと、⾃分の世界
を⾊を⼯夫してつくりだすことなどの表現の⾒せ場と思います。
6 下蒸し
彩⾊が完成して完全に乾燥してからは、⼀度⽊枠などから外し⾼温の蒸気を滞留させている蒸し器を使って約30分間⾊の定着をさせる作業をします。
7 中埋め(伏せ糊)
⼩さな筆や刷⽑によりムラ無く作業することが難しいことから、友禅染では彩⾊を終えて柄の部分の染料を蒸して定着させる⼯程の後で、作品を⽊枠などにしっかり固定して⽣地を伸ばして柄を糊で伏せる技術を使っています。
この⼯程での糊は、図柄を描いた時に使う⽷⽬糊置きの際の糊のとは餅⽶と⽶糠の配合を変えたものを使います。ここでの図柄の草や恐⻯を、先⾦のついた筒の中に伏せ糊を⼊れて埋めていきます。柄の区切りまでの中埋めを終えると、安定して乾燥させることと染める時の糊の保護をする為のおが屑(⼜は⽊屑)を振り掛けておきます。
8 地洗い
柄の部分は染まることが無いようにしたいのですが、中埋めが乾燥してから直ぐに染料で染めることで、描いた柄の部分に最後に染めていく⾊が⼊り込んでしまうことを防ぎたいので、とても⼤切な作業になります。
9 地染
彩⾊を終えて中埋めされたことで、作品全体を⼤きな刷⽑を使って染める準備が出来ました。地染めまでの⼯程についてはこの全体を先に作業する(先染め)と⾔う技法は有ります。しかし加賀友禅のほとんどの作業⼿順としては、最後に背景を染めることとしています。図柄の際に決めている全体の⾊の配置の中で、最後に染めていく⾊となります。ここでの染めにもとても熟練した技能が必要とされます。背景となる部分に⼿際良く染料を染めていく作業ですので、刷⽑への原料染料の含ませ⽅や刷⽑の動かし⽅など乾くまでの僅かな時間に次の刷⽑を使っていく技能を⾝につけるまでにはたくさんの経験がいるものと思います。
染め上がるときの乾燥した⾊の出来栄えまで考えて⾊を調整して、作品をしめくくる作業になります。着物を染める時には、約16メートルもある反物を素早く正確に染めるので、技術はもちろん作業する場所の環境がとても重要な要素になってきます。染場(鰻の寝床)とされる建物は反物の⻑さ以上の敷地に⽤意します。その中では、気候に対応して、湿度の管理などをします。屋外で作業することはないと思いますし、こうした加賀友禅の制作⼯程を⾏なうには、気候⾵⼟もとても重要な要素になります。
加賀藩前⽥家の⼿厚い⽂化保護に⽀えられると共に、⾦沢を舞台に盛んになってきた加賀友禅の歴史の流れには「技と⼟地柄と⾵⼟」が密接に関係します。地染めを仕上げてからは、⾃然乾燥させておきます。
蒸し
全体を染めたら、最後に蒸し器に⼊れて約1時間の蒸しを⾏ないます。この⼯程で、染料を布に定着させることになります。
友禅流し(⽔洗)
布に加⼯した糊や染めた染料の余剰なものを、冷⽔に浸して布を優しく揺らしながら洗い出していきます。
⾦沢では浅野川と犀川での友禅流しが古くから⾏なわれてきました。蒸しを終え乾燥させた布は、およそ1時間冷⽔で流しておいて洗い残しが無いように仕上げの⼿洗いをしてから乾燥となります。冷たい⽔を使うのは、繊維に⾷い込んだ染
料と余剰な要素を適切にふるい分けて洗い出していく為です。温⽔を使うことで、布に蒸して定着している必要な染料までもが最初に⽔洗することのなかで洗い流されてしまうことを防ぎます。